もう随分前になるが、久保工業所の久保さんから電話があり、
「２４金ペン先を作ったから見に来ないか？」
？！２４金？２４金は強度が低くペン先にはむりなのではないか？という考えがよぎったが、取り急ぎ久保工業所に向かった。
見せていただくと、まばゆいばかりの黄金で１４金などより明らかに黄色みが強い。
当時、久保工業所がペン先加工を依頼したところ（現在は廃業）がどうやらＴ貴金属が開発した材料を使ったということらしい。
Ｔ貴金属はワイヤーボンディングの線材技術を保有しており、高強度の線材用合金を作っている。それを板状にして加工したのが今回の製品。
２４ｋとは言え、まったく不純物が認められてないわけではなく、数パーセントの元素で強化し、尚且つ、高い加工度で高強度を維持している考え方になっている。
しかし、成形時の不良、切り割り後の変形が大きく不良がたくさん出てしまい十数個生産したところで生産中止となってしまった。
今回の品はその希少なペン先を用いた蒔絵万年筆。
ハードラバーを削り出して作られたベスト型のパイロットでいう５０号サイズのボディ。
蒔絵は”柴田是真”の「流水蝙蝠角盆」の蝙蝠をモチーフにして背景を流水に見立て、金銀青金で杢目蒔絵を施した。
インクの吸入はインク止め式となっており、スポイトやシリンジなどで行う。
容量は６ｃｃ以上と巨大な容量を誇る。
ペン先はしっかりとしなる柔らかい、久保幸平氏の溶着研ぎ出し研磨による丸研ぎの”B”。
そしてハードラバーのペン芯は戦前ナミキ５０号のように金地で仕上げた豪華な仕様。
この世に２つとない究極のワンオフモデル。
豪華な木製ケースが付属する。