酒井栄介氏が軸を引き、石目塗りに寛永通宝、一朱銀銭の蒔絵を施したインク止め式万年筆。
ペン先は兜木銀治郎氏が手掛けた”4622”JISナンバー刻印のある１４ｋ。
40号サイズであることを示す刻印が打たれている。
モンブラン１４４などヨーロッパの4号サイズに近い。
ワイドな広がりを持つそのニブはハート穴近傍で独特のしなりを生む厚みに設定されている。
美しく輝くペンポイントは良質なイリドスミンでつるつると滑る筆記感が独特だ。
吸入はインク止めと言われる日本独自のアイドロッパー式。
オノト式のプランジャー式を模したものでゴムなどで作るバルブを廃して
尻軸とロッドでインクを遮断する部分のみを機能させた方式。
恐らく当時の日本にはそのバルブの耐久性を持たせる素材の技術が無かったためと
軸引き職人が自己完結してペンを作れるため広く用いられたのだろう。
昔の日本には家内工業的にこのタイプを生産する会社が数多く有り、
あとはペン先とペン芯を買って組み立てれば完成品をデパートなどに収めることが出来た。
ペン芯は名人と言われた土田氏の作と言われている。
ボディには滑り止め効果のある石目塗りに古銭を蒔絵で施した古典的なデザイン。
プラチナ万年筆などが好んで採用していたデザイン。
写真ではキャップを後に挿しているが傷が付くので実際に使用する際は挿してはいけない。
漆芸で作られた軸は挿さない方が無難である。傷が気にならない方はどうぞ。
コンディションも素晴らしい。